20 March 2014

Holi

3月16、17日インドではホーリー祭りがおこなわれました。

ホーリー祭はパールグナ月(2月から3月)の満月前夜から2日間に渡って祝福されます。その定義には様々な説がありますが、第一に、春の心地よい陽気な季節の中で作物が豊かに実り始め、人々が喜びに満ちているこの時、より良い収穫を迎えることができるよう祈りを捧げるための祝祭であると伝えられます。大自然とともに生きる人々の喜びと感謝の念が、このホーリー祭でも大きく示されています。

ホーリー祭にあたる満月の前夜には、街角や広場など、様々な場所で見上げるほどの大きな焚き火が熾され、そして翌朝の満月においては、色粉・色水の掛け合いに見られる喜びのクライマックスを迎えます。この日ばかりは、カーストも、貧富も、男女も、年齢も、いかなる差も存在しません。友人であろうと通りすがりの人であろうと、誰であっても平等に、外に出ればどこからともなく色粉・色水がかけられ、「ハッピー・ホーリー!」と言い祝福し合います。インドのニュースでは、多くの政治家たちの色粉にまみれた姿もまた映し出されるほど、老若男女、熱気と喜びに満ちた祝祭です。

そんなホーリー祭は、他の祝祭に比べあまり多くの伝説はなく、定められた儀式なども存在しないと言われています。しかし、精神性を育む言い伝えがやはり広く存在しています。有名な言い伝えでは、ヴィシュヌ神を心から崇拝するプラフラーダと、神から炎に焼かれないという恩寵を受けたホーリカーの話があります。

悪の手によって様々な災難に見舞われていたプラフラーダでしたが、ヴィシュヌ神からの強い加護を受け、ある時炎に入れられるも焼かれることはありませんでした。そしてプラフラーダと共に炎に入り、焼かれたのがホーリカーです。プラフラーダを守るために犠牲となったと神聖視される一方、自らに与えられた恩寵を利用しプラフラーダを焼き殺そうとした故、神の怒りに触れ炎に焼かれたと伝える説もあります。

満月の前夜に行われる大きな焚き火は、このホーリカーの勇敢な犠牲を讃える一方、別のホーリカーに見られる悪を焼き尽くす意味があるとも言われています。また、プラフラーダの神を思い続けるその信仰は、焼き尽くすようにいかなる悪をも寄せ付けません。この、悪に対する善の勝利を祝福する火が、この夜に大きく燃え上がります。

そして焚き火を終えた翌朝に行われる色粉・色水の掛け合いは、クリシュナとラーダーの戯れの中で生じたものと広く知られています。また、古典のラトナーヴァリーの中では、クリシュナ神につけられる情熱を意味する朱色粉が人々の間でもつけられるようになったことが始まりだとも言われ、クリシュナ神にまつわる神話が多く存在します。

また、シヴァ神にまつわる神話も存在します。世界を救うシヴァ神の子どもを授かるために、ヒマラヤで長い間深い瞑想に浸っていたシヴァ神の目を、愛の神であるカーマデーヴァが愛の矢を放ち開かせようと試みます。それを怒ったシヴァ神がカーマデーヴァを焼き殺した日がこのホーリーの日であったと言われます。南インドでは、シヴァ神の目を開かせたこのカーマデーヴァを、ホーリーの日に讃える慣習もあります。

どんな形であっても、この美しい春の時に人々の喜びが盛大に表されるのがこのホーリー祭です。人生とはカラフルで喜びに満ちていること、クリシュナ神の象徴がそのままに表されるこの祝祭では、憎しみも悲しみも見られることはありません。家族が共に集まり、悪が焼き尽くされた後の正しさや善の下であらゆるものが平等となるこの時は、どんなものにも代えがたい大いなる至福に包まれるように感じます。

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